第2回東海大志塾-ゲスト講師:竹中平蔵氏 2012年5月23日

大村知事主催の東海大志塾の第2回目は、日本の経済のアナリストを代表する一人としても知られている『竹中平蔵』氏をゲスト講師として開催。

2時間近くに渡る竹中論に500人以上の塾生が耳を傾けました。

 

竹中先生の講演の内容の一部をまとめてみました。

 

▶何故日本の経済が停滞しているのか?

 

▶消費税増税は経済成長につながるのか?

 

 

<竹中平蔵氏の講演より>

 

<アルフレッド マーシャルが述べた言葉>


『ウォームハートとクールヘッド』

 暖かい心 と 冷静な頭脳

 

 が経済成長には重要なポイント。

 

政治を志す方は暖かい心を持っているひとはたくさんいるかもしれないが、クールヘッドを持った人は少ない。

 

<ジェームス クラークの言葉>

 

『政治家は次の時代を考える』

『政治屋は次の選挙を考える』

 

今の政治家は、政治屋さんが殆どですね。

 

 

経済が厳しいと社会不安が起こる

失業と格差が生まれる

すると政治はポピュリズムに走る

 

ポピュリズム→大衆迎合政治

(国民の生活を直接助けること)

 (民主党がやっている子ども手当など)

 

ポピュリズムをやると経済よくなるか?

 

ならない

 

財政不安だけが残る


 社会不安とポピュリズムの悪循環

 

政治家は国民の声に耳を傾けなくてはならないが

決してご用聞きであってはならない。

 

政治のリーダーに求められるのは、

自分はこう思うから、こうさせてくれ

そいった政策を打ち出していくこと。

 

 

<経済の立て直しに必要なこと>

 

ポピュリズムと社会不安の悪循環を断ち切れるかということが問われている。世界の各国で、今それができる政治的リーダーが出てくることが問われている。

 

<今の経済は異常値>

 

<メディアもひどい>


例えば。。。

巨人がダメになるとタイガースもダメになる

与党がダメになると野党もダメになる

政治がダメになるとメディアもダメになる

 

 

日本には素晴らしい企業がたくさんある。

トヨタ

パナソニック

ソニーなど

 

自動車は別格として、

電機業界は

ソニー、パナソニック、日立と3つ合わせても韓国のSumsongに届かない

 

世界のトップ100社の中に入る日本の大企業は3~4社のみで、『トヨタ』『キャノン』『ホンダ』など

 

 

世界GDP 日本は3位(まだいいが、、、)

一人当たりの所得は

世界の先進国30カ国中、19~20位

日本は下のクラス

 

今はまだいいかもしれない、しかしこのままでいったら

間違いなく10年程度で、一人当たりの所得は韓国に抜かれる

 

<チャーチルの言葉>

 

成長はすべての矛盾を覆い隠す

人間にっとて大切なことはたくさんあるかもしれないが、

やはり成長することは必要不可欠

 

成長しながら問題を解決しなければならない

成長なくしては問題は解決はできない。

 

<政府は何かあるとすぐに「成長戦略』を作るが

それはいいことだろうか?>

 

日本は『成長戦略』に基づき、やってはいけないことをやっている

日本がヘンなことをやめれば、そこそこの経済成長はできる

 

<モラトリアム>

 

亀井静香さんがやった『モラトリアム』という政策は

よくなかった。

(★モラトリアム→金融の混乱を抑えるため、手形の決済、預金の払い戻しなどを一時的に猶予すること。)

 

『モラトリアム』が実施されると、中小企業の申し出が

100万件を超えた

 

<モラトリアムを申請したらどうなるのか?>

 

今後は銀行は絶対にお金を貸してくれない

 

会社の将来的な成長には結びつかない!

 

原理、原則に反したことをすると、やはりおかしくなる

 

<小泉さんがよく言っていた>

 

自助自立(自らを助く)

 

自ら助けることができる人がたくさんいれば、本当に助けを

必要としている人を助けることができる

 

全員を助けることはできないということ

 

例えば)

 

船が沈もうとしているとき、全員が救命ボートに乗ろうとしたら全員が死ぬ。

自分で泳げる人は自分の力で泳いでもらわないと仕方ない。

泳げない人や弱い人たち、子どもを先に救命ボートに乗せること。

これしかない。

 

厳しいけどこれが社会の大原則

 

古今東西、政権が変わろうと総理大臣が変わろうと、政党が変わろうと、絶対に変わらない私たち社会の大原則。

それは、自助自立が原則

その自助自立の大原則に反するような、全部助けてやる!

というようなことをやってるからお金が回らなくなってくる。

 

<雇用調整給付金>

 

補正予算でかなりのお金がこの

『雇用調整給付金』に使われた。

 

▶リストラを迫られてる中小企業に対して、補助金を出し、首を切らないで雇用をつなげるようにすること。

ウォームハートで、一見すごく暖かい政策に感じるが、

これは『人材の塩づけ』とでも言うべきで、本当に必要なところに人が回らなくなる。

経済は活力をなくしていく。

 

この3月にモラトリアムの期限が切れるところだったが、

何の議論もなく一年延長した。

来年の3月はどうするつもりなんでしょう?

ずーっとこんなことはやっていられない。

 

とにかくやってはいけないことをやめること。

当たり前のことをやること。

 

竹中氏は経済財政政策担当大臣を4年半やった。

しかし成長戦略というものはやっていなかった。

それでやって行けた。

しかし、成長戦略を作ってからの方が日本の成長率は低い

 

普通のことをやってきた時の方が成長率が高い。

 

<消費税の増税について>

 

財政赤字が大きい

 

国債 1000兆円 

 

日本のGDP500兆円の2

 

日本の消費税 5%

 

他の国に比べると担税力がある。

(上げる余裕があるということ)

 

しかし消費税増税は

 

1. 財政再建

 

2. 社会保障を良くしたい

 

このふたつの問題の解決には一切ならない

 

つい4~5年前までの日本の一般歳出の規模82~83兆円の一定額で続いてきた→ 現在では96兆円(14兆増えた

 

社会保障費は、毎年1兆円ずつ増えているので、5年間で5兆円増えた。

ということは、9兆円は別の理由で増えている

 

20089月のリーマンショックの時、日本も少なからずとも影響を受け経済が落ちこんだ。

この時はちょうど麻生政権のときで景気対策を計り、元に戻そうとしたところで、民主党への政権交代があった。

そこで、民主党が子供手当や交付金のばらまき典型的なポピュリズム政策)で借金がみるみるうちに14兆円に膨れ上がった

 

野田総理は5%消費税の消費税引き上げにより、13兆円の増収を計りたいと言っているが、何のことはない、これは民主党に政権が移ってから増えた十数兆円の尻拭いに他ならない。

だから、財政再建にもならず、社会保障もよくならない

 

<政府の現在の税制プラン>

 

2015年に消費税を10%までに上げたとして、その後、政府は2020年の基礎的財政赤字を均衡させるためには、さらに7%の増税が必要だと打ち出している。

つまり17%になるとということ。

(これはほぼドイツ並み)

ドイツ並みになっても社会保障はよくならない

 

今回の5%消費税の増額分の内訳は 

4%は政府を維持するために使われる

(前述の十数兆円の尻拭い)

 

残りの増税分1%社会保障

 

そのうちの0.6% → 低所得者対策 

一般の国民には殆ど当てはまらない

 

<年金制度をもう一度考え直すとき>

 

日本の昭和35年の平均寿命は65~66だった。

だから年金支給開始は60歳で良かった

しかし今は平均寿命は85歳前後になっている

 

平均寿命が上がったのだから

年金支給開始年齢を徐々に上げていくべき。

 

70歳~75歳くらい

 

<今回のとりあえず増税案を進めれば>

 

日本は間違いなく重税貧困国になる

 

穴のあいたバケツに水を注ぐようなものだから、7万円の基礎年金年金をもらうためには、24%の消費税を払わなければならなくなる。

将来的には70%以上の消費税率を払わなければやっていけなくなる。

 

<日本の社会保障で決定的に欠けているもの>

 

若い人の社会保障

 

特に女性への社会保障

 

<ぜひ進めなければならない政策>

 

女性の育児休暇はもちろん、

男性の育児休暇の制度の拡充

 

▶女性の子育てが終わってからの社会復帰のための

職業訓練制度

 

自助自立のための環境を作っていくこと

政府の最重要課題であるべき

 

労働市場と教育のためにお金を使うこと

 

日本はヨーロッパと比べると

労働市場と教育の社会福祉への予算は4分の1程度。

 

将来増税をするにあたっては、きちんとしたビジョンを持って行わなければならない。

これまでにとりあえず増税をした国は失敗に終わっている

野田総理の増税は典型的な失敗例になる

 

▶まずしなければならないのは、公務員の給与その他余分な歳出削って削って削って一番最後に増税に持っていかなければ、成功しない。

 

<小泉内閣のやったこと>

 

2003 ~ 2007年の小泉内閣

 

2003年 基礎的財政赤字→28兆円

 

2007年 6兆円まで下がった (22兆円下がった)

 

このとき小泉内閣は特別なことはやっていない

 

歳出を増やさないように努力しただけ。

 

一方で不良債券の処理をやって

 

一方で規制緩和をやって

 

郵政民営化をやった。

 

このような普通の政策をやっただけ。

 

今の政権もまずは、普通の政策をコツコツとやるべき

 

<規制緩和の重要性>

 

現時点では隠れた規制がたくさんありすぎ。

飛行場なども、もっと規制を取り払ってもっと自由にやるべき。

医療、サービス業、教育の分野に関しても規制緩和を拡大していくべき。

 

都市の強さが、結果的にその国の強さになる。

 

日本では、東京、大阪、愛知が頑張って、経済成長のリーダーになっていくべき。

 

大村知事にも、もっともっと日本の経済成長におけるリーダーとして頑張っていただきたい。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

<講演後記>


私は竹中先生のお話には、随分感銘を受けました。

・・・消費税増税の前にやるべきことを、しっかりやること。男性だけでなく、女性も自助自立ができる社会構想をしっかりと打ち出して、経済成長をしながら、社会保障を確率していくことなどが、これからのキーポイントですね。

医療福祉グローバル人材育成を意識した教育改革も重要だということを、改めて確信しました。

 

yk

コメントをお書きください

コメント: 2
  • #1

    松本(世田谷区在住、名古屋出身) (日曜日, 03 6月 2012 10:32)

     この講義参加したものですが、東議員のまとめにより自分のメモを補う事ができました。ありがとうございました。

  • #2

    東 ゆうこ (日曜日, 03 6月 2012 11:13)

    松本さん、最後まで読んでくださったんですね。
    ありがとうございました。

    yk